邦楽:ロック
『カバーズ』 RCサクセション
88年にリリースされた洋楽カヴァー・アルバム。スタンダードな洋楽の名曲に忌野清志郎が日本語の訳詞をつけて歌っている。明確に「反戦・反核」の意思を表した訳詞が問題となり、大きな話題を集めた。
■曲目リスト
1. 明日なき世界 [オリジナル:バリー・マクガイア]
2. 風に吹かれて [オリジナル:ボブ・ディラン]
3. バラバラ [オリジナル:レインボウズ]
4. シークレット・エージェント・マン [オリジナル:ジョニー・リヴァース]
5. ラヴ・ミー・テンダー [オリジナル:エルヴィス・プレスリー]
6. 黒くぬれ! [オリジナル:ローリング・ストーンズ]
7. サマータイム・ブルース [オリジナル:エディ・コクラン]
8. マネー [オリジナル:バレット・ストロング]
9. サン・トワ・マ・ミー [オリジナル:アダモ]
10. 悪い星の下に [オリジナル:アルバート・キング]
11. イマジン [オリジナル:ジョン・レノン]
1988年8月15日に発表されたRCサクセション12枚目のアルバムにして、
日本ロック史に残る伝説のカバーアルバム。
オリコンでは初登場1位を獲得した。
『カバーズ』は、よくある洋楽カバーアルバムでない。
往年の名曲に「反戦・反核」の意訳の歌詞をのせた、強烈なメッセージ・アルバムだ。
しかし、そのメッセージ故に発売中止を食らうなど、発売前から大きな話題になっていた。
「素晴らしすぎて発売できません」
本来は、所属レコード会社の東芝EMIから発売される予定であったが、
原子力発電に関わる親会社の東芝からの圧力がかかり発売中止が決定する。
納得のいかない忌野の訴えで「素晴らしすぎて発売できません」という、
奇妙な発売中止の新聞広告掲載となった。
結局、当初は広島原爆記念日の8月6日に発売の予定だったが、
古巣のキティから終戦記念日の8月15日に発売された。
自分もこの事件では日本の音楽業界に失望したが、
同時に清志郎はある意味かっこよく映った。
豪華なゲスト陣
海外ギタリストのジョニー・サンダース、ピアニストの山下洋輔をはじめ、
山口冨士夫、三浦友和、泉谷しげる、三宅伸治、
坂本冬美、高井麻巳子、ちわきまゆみ、金子マリ・・・など豪華なゲストが多数参加している。
更に“Isuke Kuwatake”の偽名でサザンオールスターズの桑田佳祐もこっそり参加するなど、
シリアスな内容である一方で、賑やかなお祭り的な雰囲気も感じさせるアルバムだ。
中でも「4. シークレット・エージェント・マン」の坂本冬美の演歌ボーカルは、すごいインパクトだ!
これはもう日本版プログレッシブ・ロック?
ちなみにこの曲のイントロとアウトロでは、金賢姫のしゃべり声も使用されている。すごい・・・
各曲ごとに参加ゲストの記述があるので、それを見ながら聞くのも楽しい。
話題を呼んだことで商業的にも成功した『カバーズ』だが、
日本を代表するメッセージ・ロック・アルバムと言っていいだろう。
静かなバラード曲「ラヴ・ミー・テンダー」と反核メッセージのギャップは印象的。
風刺やブラック・ユーモアの末にアルバム・ラストに登場するのはジョン・レノンの「イマジン」
平和への壮大なメッセージを素直に切々と歌い上げる清志郎。・・・感動だ。
ジョン・レノン以外でイマジンをこれだけ説得力を持って歌える人は、他にいないだろう。
ベストカバーだと思う。
音楽でこれだけのメッセージが伝えられるということを、
改めて認識させてくれるアルバムだ。
音楽とは関係ないが、これだけの名盤にも関わらず、
CDにはライナーノーツなどの解説がないのは残念。
レコード会社も「伝えていく立場の一端を担っている」という自覚が欲しいものだ。
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『ワンダフル・デイズ 1970-80』 RCサクセション
WONDERFUL DAYS 1970-80 THE RC SUCCESSION BEST ALBUM (ワンダフル・デイズ) RCサクセション(RC SUCCESSION) 2005年にデビュー35周年を迎えたRC。本作は“祝 デビュー35周年”プロジェクトの一環で、東芝EMI盤と同時発売されるオールタイム・ベスト。レーベルの垣根を越えた選曲で、バンドの変遷が辿れる。入門編にも最適だ。 |
■曲目リスト
1. トランジスタ・ラジオ
2. ステップ
3. 上を向いて歩こう
4. 2時間35分
5. ぼくの好きな先生
6. 宝くじは買わない
7. 涙でいっぱい
8. キミかわいいね
9. あの娘の悪い噂
10. やさしさ
11. わかってもらえるさ
12. 君が僕を知ってる
13. たとえばこんなラヴ・ソング
14. Sweet Soul Music
15. ボスしけてるぜ
16. いい事ばかりはありゃしない
17. ヒッピーに捧ぐ
18. スローバラード
19. キモちE
20. 雨あがりの夜空に
2005年にデビュー35周年を記念して発売されたオールタイム・ベスト。
この企画では、USMジャパン盤と東芝EMI盤がシリーズものとして同時発売されており、
それぞれ年代別に代表曲が収録されている。
ともにジャケットのデザインに昭和漫画家の巨匠、杉浦茂画伯のイラストが使われている。
杉浦茂と言えば、「猿飛佐助」などで有名な漫画家だ。
このイラストが、2枚のシリーズを特長付けていると言える、、、
が、ファンとしてはRCサクセションの写真も使って欲しかった気もする。
バランスの良い選曲
RCサクセションのベスト盤は、レーベルの移籍をしていることもあり、
意外なほどたくさん発売されている。
活動期間が長く、発表曲数も多いため、CD1枚ではなかなか収まりきらないのが実際のところで、
つぼを押さえた選曲となるとこの企画のように、2枚組くらいのボリュームは必要。
『ワンダフル・デイズ 1970-80』は、初期のシングル「宝くじは買わない」「涙でいっぱい」「キミかわいいね」など、
オリジナル・アルバムに未収録のレアな音源も収録。
もちろんアルバムからの代表曲も押さえている。
唯一無二のサウンド
RCサクセションというと、ロック・バンドと思われがちだが、
初期のRCサクセションは、フォーク・グループだった。
だが、良くあるフォーク・ソングなどではなく、
不思議なコード進行とメロディを使用した独自のサウンドとなっていて驚かされる。
ビートルズの影響を受けていたこともあり、様々な挑戦、試行錯誤をしていたことが感じられる。
もちろん、ビートルズ・サウンドとも全然違うし、とにかく唯一無二のサウンドという他ない。
ノリのいい曲をやるイメージが強いRCサクセションだが、
「ヒッピーに捧ぐ」「スローバラード」といったバラード系の曲は、どれも秀逸だ。
清志郎の感情のこもった歌唱は実に素晴らしい。
シングル曲に関しては、シングル・バージョンで収録して欲しかったが、
その辺りが叶えられなかったのは残念。
それとRCサクセションのCD全体に言えることだが、解説はもっとしっかりしたものが欲しい。
曲ごとの解説などがあってもいいのでは?
「スローバラード」
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『グレイトフル・デイズ 1981-90』 RCサクセション
GREATFUL DAYS 1981-90 THE RC SUCCESSION BEST ALBUM (グレイトフル・デイズ) RCサクセション(RC SUCCESSION) デビュー35周年を記念したベスト盤の東芝EMI版。81~90年までにリリースした楽曲の中から18曲を厳選。日本語R&Rバンドの草分けとして計り知れないほどの影響を与えて来た彼らの軌跡を辿ることができる。 |
1. ドカドカうるさいR&Rバンド
2. 自由
3. SUMMER TOUR
4. ベイビー!逃げるんだ
5. 多摩蘭坂
6. Oh! Baby
7. ノイローゼ・ダンシング (CHABOは不眠症)
8. 不思議
9. Johnny Blue
10. つ・き・あ・い・た・い
11. ラブ・ミー・テンダー
12. サン・トワ・マミー
13. 軽薄なジャーナリスト
14. 空がまた暗くなる
15. マリコ
16. LONELY NIGHT (NEVER NEVER)
17. Naughty Boy
18. すべてはALRIGHT(YA BABY)
2005年6月に『ワンダフル・デイズ 1970-80』と同時発売となったベスト・アルバムの後編。
こちらは東芝EMI(現EMIミュージック・ジャパン)より発売された。
入門に最適のベスト・アルバム
ジャケットのデザインは、『ワンダフル・デイズ』同様に杉浦茂のイラストが使われている。
コンセプトを一貫させ、一見2枚組アルバムのようなこの2枚が、
レーベルを越えて同時に発売された意義はとても大きいと言えるだろう。
ボリュームも十分で、活動全体を把握するのにも最適なアルバム・シリーズとなっており、
RCサクセションの入門用には『ワンダフル・デイズ 1970-80』『グレイトフル・デイズ 1981-90』の2枚を是非おすすめしたい。
CD初収録曲・テイク
RCサクセションには未CD化音源が非常に多いが、このアルバムで再び日の目を見たテイクもあり貴重だ。
7. ノイローゼ・ダンシング (CHABOは不眠症) ・・・SUMMER TOUR B面
8. 不思議・・・シングル・バージョン
15. マリコ・・・ミニ・アルバム『NAUGHTY BOY』収録曲
しかし、「SUMMER TOUR」は、アルバムのライブ・バージョンで収録。
「Oh! Baby」「LONELY NIGHT (NEVER NEVER)」「Naughty Boy」なども、
シングル・バージョンでの収録が期待されたが、今回もファンの思いが叶えられないのは残念だ。
清志郎がなくなった今、中途半端なベストアルバムの乱立はやめにして、
アルバム未収録曲、未収録テイクを集めた編集盤をそろそろ考えても良いのではないか?
ビートルズもファンの混乱を避けるため、オリジナル・アルバム未収録曲集「パスト・マスターズ」を発売したが、
こうした姿勢を見習いたいものだ。
通して聞くと反原発の「ラブ・ミー・テンダー」は、なんだか浮いて聞こえるが、
それだけ『カバーズ』は強烈なコンセプトをもったアルバムだったんだと改めて感じさせられる。
前編に比べて、メジャーな曲はやや少ないわけだが、
ラストを飾る隠れた名曲「すべてはALRIGHT」はおすすめ。
落ち込んでる時などに聞くと、きっと勇気をくれるはずだ。
「すべてはALRIGHT(YA BABY) 」
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『ザ・タイマーズ』 ザ・タイマーズ
Zerry(忌野清志郎)がヴォーカルを務める謎の4人組覆面バンドの1stアルバム。独特のユーモアを交えて政治や社会を風刺する過激な歌詞が魅力。モンキーズのカヴァー曲(5)がCMで使用されヒットした。
■曲目リスト [試聴|ダウンロード]
1. タイマーズのテーマ
2. 偽善者
3. 偉人のうた
4. ロックン仁義
5. デイ・ドリーム・ビリーバー~DAY DREAM BELIEVER~
6. 土木作業員ブルース
7. 争いの河
8. カプリオーレ
9. LONG TIME AGO
10. 3部作(人類の深刻な問題,ブーム ブーム,ビンジョー)
11. ギーンギーン
12. 総理大臣
13. LONELY JAPANESE MAN
14. 税
15. イモ
16. タイマーズのテーマ(エンディング)
17. Walk don’t run
-ボーナストラック-
18.企業で作業
19.ダイナ(嫌煙のダンナ)
1989年11月8日にリリースされた覆面バンド「タイマーズ」の1stアルバム。
タイマーズは、忌野清志郎そっくりのゼリーが率いる(という設定の)ロック・バンドである。(^^;
デビュー曲のシングル「デイ・ドリーム・ビリーバー」 は、エースコックのスーパーカップCMソングに使われヒットした。
なお、リマスター盤には、シングルB面の「企業で作業」「ダイナ(嫌煙のダンナ)」が、
ボーナストラックとして収録されている。
メンバー
ザ・タイガースのパロディバンドということになっており、
それぞれジュリー、トッポ、サリー、ピーを思わせる名前である。
・ゼリー/忌野清志郎(ボーカル・ギター)
・トッピ/三宅伸治(ギター)
・ボビー/川上剛(ウッドベース)
・パー/杉山章二丸(ドラムス)
前年にはRCサクセションの『カバーズ』が、東芝の事情で発売中止にされている。
これに抗議する意味でゲリラ・ライヴを計画するが、
メンバーの賛同を得られなかった忌野清志郎がメンバーを集める。
これがバンドのスタートだと言われている。
表現の自由を奪われた不満を爆発させるがごとく、
怒りに満ちた、危ない内容のメッセージ・ソングを演奏している。
だが、このタイマーズのアルバムに関しては、しっかりと東芝EMI からリリースされている。
なんだか皮肉だ。
楽曲は、ロックンロールやブルースをベースにしたシンプルなものが中心で、3分前後の短いものが多い。
17曲というボリュームはそういった部分もあるし、
それだけ当時の清志郎が言いたいことで溢れていたのだろう。
曲間を開けず、アルバム全体がメドレー状態になっているのも特徴で、
意図的にライブを感じさせるコンセプトにしているのがわかる。
実際、タイマーズはライブで一緒に騒ぐのが面白いバンドだと思う。
↓これを見ていただくと楽しさがわかります(^m^;
▲伝説の「ヒットスタジオR&N」出演時のスタジオライブ(1989年10月13日)
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『復活!!タイマーズ』 ザ・タイマーズ
95年リリースの2ndアルバム。同年3月に日清パワー・ステーションで行なわれたライヴ音源に、阪神大震災チャリティ曲(16)を追加したもの。時事ネタをテーマにした楽曲が多いので、当時の世相が見えてくるようだ。
■曲目リスト
1. プロパガンダ
2. タイマーズのテーマ
3. 偽善者
4. 偉人のうた
5. ロックン仁義
6. 土木作業員ブルース
7. ジョーク
8. 国名改正論(『逃げ腰』という国の国民)
9. 国際化の時代
10. 覚醒剤音頭
11. 宗教ロック
12. イモ
13. タイマーズのテーマ(エンディング)
14. まわりはワナ
15. サティスファクション
16. サヨナラはしない
5年ぶりに復活したタイマーズの2ndアルバム。
といいながら、中身は日清パワーステーションでのライブ盤。
しかし、新曲も8曲収録されていて、なんとも位置づけが微妙なアルバムだ。
そして、これがメジャーレーベルから発売されたラスト・アルバムということになる。
新曲には「覚醒剤音頭」「宗教ロック」など過激なタイトルの曲もあるが、
聞いてみると、おちょくった感じが小気味良くて楽しい。
当初はインディーズからのアルバム発売を予定していたが、
東芝EMIからの要請でメジャー発売された。
こうした経緯もあり、収録曲はマトモな部類のものが選ばれており、
ライブで味わえる本当の楽しさは伝わらないと言えるだろう。
しかし、東芝EMIというレコード会社はちゃっかりしてますね。
エンディングにオマケのように収録されている「サヨナラはしない」は、スタジオ収録の3rdシングル。
何もタイマーズとして発売しなくても・・・という、爽やかないい曲。
このあたりもコンセプト的に中途半端な感じを受ける。
どうせならリマスター盤には、シングルB面の「スウィート・ヒッチ・ハイカー」もボーナス収録して欲しかったが・・・
「サヨナラはしない」を発売した時点で、もう清志郎には歌いたい不満はなくなっていたのかもしれない。
そしてバンドの役目は終えたのだろう。
でもいい曲だな・・・
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『不死身のタイマーズ 』 ザ・タイマーズ
パワーステーションでのライヴ。レコ倫を通過できない曲を含んだインディーズレーベル発売のCD。「障害者と健常者」「あこがれの北朝鮮」「トルエン」「お前の股ぐら」と更に危ない曲名が並ぶ。
※インディーズ
■曲目リスト
1.ヘリコプター
2.夢のかけ橋
3.ゴミ
4.障害者と健常者
5.あこがれの北朝鮮
6.ブツ
7.トルエン
8.お前の股ぐら
9.イツミさん
10.トカレフ(精神異常者)
11.不死身のタイマーズ
12.リプライズ
13.最後の御挨拶
インディーズから発売されたパワーステーションでのライヴ・アルバム。
タイトルからして過激な内容というのがわかる。
タイマーズを楽しむなら、やっぱりこちらのアルバム。
「4.障害者と健常者」は放送禁止用語連発の曲。言葉遊びをしながらもしっかりとしたメッセージがある。
「5.あこがれの北朝鮮」などはタイトルは過激でも、平和を願った素晴らしいメッセージ・ソングだ。
「9.イツミさん」はガンで亡くなったアナウンサーへの歌。
これらの曲がメジャーでは発売できないって、もったいなくて仕方ない。
なお、現在は廃盤のため入手はやや困難となっています。
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